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開発法の基礎(3)~問題演習編②~

鑑定理論
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前回の復習

先生
先生

開発法は問題文から収支を拾って、現在価値にして、収入から支出を控除すれば解答に辿り着きます。

生徒
生徒

簡単ですね。

先生
先生

難しい開発法の問題は、この拾ってくる作業が難しいだけです。

生徒
生徒

読解力が勝負ということですか・・・何の試験か良くわかりませんね(笑

先生
先生

では、今回は少々複雑な問題を解いてみましょう。


複雑な練習問題を解いてみよう。

<練習問題>
一体利用することが合理的と認められる、規模の大きい更地である対象不動産に、開発法を適用した。販売総額等の諸数値は下記のとおりである。この場合、開発法による価格を求めよ。
①開発スケジュール
建築着工までの準備期間を価格時点から6か月とする。建築工事は価格時点から6か月後に着工し、 期間10か月で竣工するものとし、 建築費は着工時に10%、 工事中間時点に10%、竣工時点に80%を計上する。
分譲は着工から2か月後に開始する。販売収入は竣工時販売率を80%とし、 当該竣工前販売部分に係る手付金(10%)は分譲開始から4か月目(平均収入時点)、残金(90%)は建物引き渡し時(竣工時)に計上する。また、竣工時の売れ残り20%部分の分譲収入については、 分譲開始から9か月目(平均収入時点)に計上する。
また、付帯費用は価格時点から5か月目、13か月目にそれぞれ50%計上する。
②建築費は200,000千円とする。
③付帯費用は分譲販売収入総額の10%とする。
④販売総額を395,000千円とする。
⑤投下資本収益率を13%とし、各月の複利現価率は以下のとおりである。
先生
先生

過去の論文式本試験問題をオマージュした問題です。

生徒
生徒

問題文なが!!

先生
先生

開発法の問題というより、現代文の読解問題に近いかもしれません。

先生
先生

開発法の問題は、収入の現在価値から支出の現在価値を控除するだけなんですが、問題文から情報を拾い上げるのが面倒ですね。

生徒
生徒

文系なので読解問題は得意です!

先生
先生

分譲収入・建築費の支払いがそれぞれ複数回に分かれています。

ここがポイントです。

先生
先生

それぞれの収入・支出の時期を特定し、適切な複利現価率を選択して、各々現在価値を求めていくことになります。

生徒
生徒

がんばりまーす!


収入の現在価値

収入時期

先生
先生

収入は何回ありますか?

販売収入は竣工時販売率を80%とし、 当該竣工前販売部分に係る手付金(10%)は分譲開始から4か月目(平均収入時点)、残金(90%)は建物引き渡し時(竣工時)に計上する。また、竣工時の売れ残り20%部分の分譲収入については、 分譲開始から9か月目(平均収入時点)に計上する。
生徒
生徒

む、む、むずかしいです、これ。

先生
先生

こういう時は、図を描いて整理しましょう。

先生
先生

現在が価格時点です。

工事着工後に分譲が開始され、竣工し、その後マンションが完売する。
こんな時系列になるはずです。

先生
先生

分譲が開始されてから、徐々に販売され、竣工までの80%が販売されます。

先生
先生

販売されるごとに手付金が支払われます。平均が分譲開始後4か月後となるので、4か月後に手付金の収入が計上されます。

生徒
生徒

これが1回目ですね!

先生
先生

次に竣工時に残額を受け取ります。

生徒
生徒

2回目!

先生
先生

最後に売れ残りの販売時は、平均すると分譲開始から9か月目となるので、9か月目に残りの販売収入を計上します。

生徒
生徒

なるほど!合計3回の収入時期を考えればいいんですね!

先生
先生

では、手付金収入、竣工時収入、売れ残り収入はそれぞれ価格時点から何か月目になるか整理しましょう。

先生
先生

まずは手付金収入。

生徒
生徒

手付金は分譲開始から4か月目で、分譲開始は着工から2か月目、着工は価格時点から6か月目だから・・・

生徒
生徒

6か月+2か月+4か月=12か月目!

先生
先生

続いて竣工時収入。

生徒
生徒

竣工は着工から10か月目、着工は価格時点から6か月目なので・・・

生徒
生徒

6か月+10か月=16か月目!

先生
先生

最後に売れ残り収入。

生徒
生徒

分譲開始から9か月目なので・・・

生徒
生徒

8か月+9か月=17か月目!


収入額

先生
先生

次に、それぞれの収入金額を計算してみましょう。

先生
先生

まずは手付金。

生徒
生徒

手付金は、竣工時までに販売した80%のさらに10%だから・・・

生徒
生徒

395,000千円×80%×10%=316,000千円!

先生
先生

では、竣工時は?

生徒
生徒

竣工時は、残りの90%だから・・・

生徒
生徒

395,000千円×80%×90%=284,400千円!

先生
先生

最後に売れ残り。

生徒
生徒

売れ残りは全体の20%だから・・・

生徒
生徒

395,000千円×20%=79,000千円!

先生
先生

良くできました!お疲れ様!


収入の現在価値

先生
先生

収入時期と収入額を整理すると↓のようになりますね。

生徒
生徒

ん? 表の複利現価って何ですか?

先生
先生

複利現価率を乗じて求めた現在価値を複利現価と呼びます。現在価値と同じです。

生徒
生徒

では、複利現価率を問題文から拾って、金額に掛ければ現在価値が求められますね!

生徒
生徒

収入の現在価値は336百万円です!

先生
先生

よくできました。


建築費の現在価値

先生
先生

続いて、建築費の現在価値を求めてみましょう。

建築着工までの準備期間を価格時点から6か月とする。建築工事は価格時点から6か月後に着工し、 期間10か月で竣工するものとし、 建築費は着工時に10%、 工事中間時点に10%、竣工時点に80%を計上する。
先生
先生

収入と同様に、支出時期・支出金額を把握して、適切な複利現価率を拾って、現在価値を求めればゴールに辿り着きます。

生徒
生徒

では、支出時期からはじめますね。

生徒
生徒

着工時点の6か月目と、竣工時点の16か月目と、その間の11か月目だね!

生徒
生徒

支出額は簡単ですね。建築費に割合を掛ければいいんですから。

生徒
生徒

<着工時>200百万円×10%=20百万円
<中 間>200百万円×10%=20百万円
<竣工時>200百万円×80%=160百万円

先生
先生

残るは複利現価率を乗じるだけですね。

生徒
生徒

とーりゃー!!

先生
先生

次は、付帯費用の現在価値を求めましょう。


付帯費用の現在価値

先生
先生

これで最後です。付帯費用の現在価値を求めてみましょう。

付帯費用は価格時点から5か月目、13か月目にそれぞれ50%計上する。
③付帯費用は分譲販売収入総額の10%とする。
生徒
生徒

よいしょー。

先生
先生

おみごと!


開発法による試算価格

先生
先生

収入・建築費・付帯費用の現在価値をまとめてみました。

先生
先生

試算価格はいくらになりますか?

生徒
生徒

収入の現在価値から、建築費・付帯費用の現在価値を控除するから・・・

生徒
生徒

336百万円▲173百万円▲36百万円≒127百万円!

先生
先生

長かったですね。お疲れさまでした。

生徒
生徒

開発法の問題というより、IQテストか現代文の読解問題でしたね。


 

コメント

  1. 本平幸男 より:

    基準の開発法は理論的に誤っていると考えます。バブル後の総量規制のあった時代ならともかく、現在の借入金(建築費など)の割引率は銀行借入れ金利であり、利潤率が関係することはありません。もし、詳しい説明を希望する場合は、メールアドレスまで連絡ください。

    • 管理人管理人 より:

      コメントありがとうございます。
      「割引率(投下資本収益率)=銀行借入金利とすべきである」いうご指摘でしょうか?

      投下資本収益率はデベロッパーの適正な利潤を確保するための割引率になりますので、銀行借入金利を割引率にしますと適正な利潤を確保できないことになります。

      極端な例として、以下の前提を設定してみました。
      ①売却収入1億円で1年後に売却
      ②建築費等0円
      ③デベロッパーは利益率10%(金利控除前)必要
      ④銀行借入金利1%

      A:投下資本収益率1%の場合
      開発法による土地価格:1億円(1-1%)=9900万円
      →デベロッパーの利益100万円(金利控除前)

      B:投下資本収益率10%の場合
      開発法による土地価格:1億円(1-10%)=9000万円
      →デベロッパーの利益1000万円(金利控除前)

      9900万円で土地を購入するとデベロッパーは適正な利益が確保できないため、この土地を購入しないという結論になってしまいます。

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