【解説】総論第4章鑑定理論

不動産の価格に関する諸原則(8):寄与の原則

【解説】総論第4章
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寄与の原則

Ⅷ 寄与の原則
不動産のある部分がその不動産全体の収益獲得に寄与する度合いは、その不動産全体の価格に影響を及ぼす。
この原則は、不動産の最有効使用の判定に当たっての不動産の追加投資の適否の判定等に有用である。
先生
先生

ある不動産に2億円追加投資を支出すれば、1億円の不動産価値が上昇することが分かっています。どうします?

生徒
生徒

当然、追加投資しない。

先生
先生

ある不動産に2億円の用途変更費用を支出すれば、3億円の不動産価値が上昇することが分かっています。どうしますか?

 

生徒
生徒

現状のまま継続利用するより、用途変更した方が差し引き1億円(3億円ー2億円)不動産価値が上昇するので、用途変更します。

先生
先生

現状のまま継続利用するより、建物を取り壊した更地の方が5億円不動産価値が上昇するが、取壊し費用として6億円必要な場合、どうしますか?

生徒
生徒

建物を取り壊すと差し引き1億円マイナス(5億円ー6億円)なので、現状のまま継続利用します。

先生
先生

追加投資は、その不動産全体への重要度の程度に応じて、不動産全体の価格に影響を及ぼします。つまり、重要な追加投資であれば、その分不動産全体の価格を大きく押し上げますが、重要ではない追加投資であれば、不動産全体の価格は微々たる影響しか与えない。

生徒
生徒

追加投資の額と不動産全体の価格への影響を比較して、追加投資の可否を決定すべしという意味ですね。

先生
先生

例えば、大規模修繕をするか否かは、大規模修繕の結果押し上げる不動産全体の価値の程度と比較して決定します。

先生
先生

また、現行用途での継続利用を最有効使用とするか否かは、上記のとおり、用途変更費用と不動産全体の価値上昇の程度を比較して決定されます。

生徒
生徒

建物の取り壊しを最有効使用とするか否かも、建物の取り壊し費用と取壊し後の不動産の価値(更地の価値)の上昇の程度の比較をして判断するってことですね。

先生
先生

つまり、この原則は、追加投資を検討する場合に、追加投資による不動産全体の価値の上昇との比較をしましょうね・・・ということを意味しています。

生徒
生徒

追加投資の可否、つまり最有効使用の判定において、追加投資するのが最有効使用か、追加投資しないのが最有効使用なのかを判定ときに有用だということを言ってるんですね!

追加投資の可否(最有効使用の判定)は、追加投資の額と追加投資により上昇した不動産価値との比較によって判断する。

収益逓増又は逓減の原則との関係

先生
先生

追加投資により、収益が逓増していく場合と、収益が逓減していく場合がありますが、追加投資の可否について、この原則も念頭において、更なる追加投資について判断していく必要があります。

生徒
生徒

同じ様な追加投資でも、収益が逓減する状況では、追加投資に見合う不動産の価値の上昇が認められないケースもありますものね。

収益が逓減している状況では、同じような追加投資でも、不動産の価値の上昇が追加投資に見合わなくなることがある。

均衡の原則との関係

先生
先生

また、敷地と建物等が均衡を得ていれば、追加投資は不要と考えれますが、均衡を得ていない場合、追加投資によって、不動産価値の上昇が見込めます。

生徒
生徒

では、均衡を得てない場合はどんどん追加投資すればいいんですね?

先生
先生

実は、そう簡単な話ではないのです。

先生
先生

追加投資により、不動産価値は上昇することはするのですが、追加投資に見合った不動産価値の上昇であるかどうかは別問題となります。

先生
先生

例えば、容積率を十分に使っていないオフィスがあったとします。後から増築工事する費用が2億円、その結果上昇する不動産価値が1億円だとするとどうでしょう。

生徒
生徒

追加投資すれば、不動産価値は上昇しますが、追加投資額に見合いませんね。

先生
先生

はじめから、容積いっぱいに建物を建てていたら、こんなことにはならなかったんでしょうが、後から行う増改築や用途変更は割高になる傾向があり、このような状況にもなり得ます。

生徒
生徒

均衡の原則だけでは、追加投資による不動産価値の上昇の余地は、判定できますが、追加投資の可否まで判定するのは不十分ということですね。

均衡を得ていない場合には、追加投資により不動産価値の上昇余地があるが、追加投資が不動産価値の上昇と見合うかは別問題。

 

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