原価法の定義
1.意義
原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を積算価格という。)。
原価法は、対象不動産が建物又は建物及びその敷地である場合において、再調達原価の把握及び減価修正を適切に行うことができるときに有効であり、対象不動産が土地のみである場合においても、再調達原価を適切に求めることができるときはこの手法を適用することができる。
原価法ってなんですか?
いわゆるコストアプローチと呼ばれる手法で、費用の積み上げに基づいて価格を求める手法です。
対象不動産が事務所ビルである場合に基準の定義を読み替えると以下のとおりとなります。
原価法は、価格時点において、事務所ビルを新築して手に入れるために、コストの積み上げた価格を求め、この価格について、使用されてきたこと等による価値の下落分を控除して、事務所ビルの価格を求める手法である。
新築の価格を出して、それを修正して求めるんですね!
実は、土地についても、原価法を適用できるケースがあります。
土地って、作れるんですか??
土地自体は、海岸の埋立地などでない限り、新たに生み出すことはできませんが、宅地であれば、作り出すことはできます。
???
山林を切り開けば、宅地となります。
具体的には、山林の価格に造成費及び造成に係る諸経費を加算して、宅地の再調達原価を求めることができます。
東京の都心部に山林なんてないけど・・・
既成市街地内の宅地ですと、山林自体がないので、原価法の適用は難しいですね。
ただ、ゴルフ場やスキー場のように周りが山林で、山林の価格が容易に把握できる場合には、山林を買って、造成して・・・というアプローチも可能かと思います。
なるほど。
再調達原価
(1)再調達原価の意義
再調達原価とは、対象不動産を価格時点において再調達することを想定した場合において必要とされる適正な原価の総額をいう。
再調達原価は、新築で手に入れる場合のコストの積み上げでしたね!
そうですね。事務所ビルを例に挙げると、土地を仕入れて、事務所ビルの建築費を支払って、更には建築期間の諸々の諸経費を負担して、新築の事務所ビルが出来上がります。
つまり、土地代金+建築費+諸経費=再調達原価ですね。
では、再調達原価について、もう少し細かくみていきましょう。
再調達原価を求める方法
建物の再調達原価
(2)再調達原価を求める方法
再調達原価は、建設請負により、請負者が発注者に対して直ちに使用可能な状態で引き渡す通常の場合を想定し、発注者が請負者に対して支払う標準的な建設費に発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を加算して求めるものとする。
建物の再調達原価について、基準は上記のとおり定めています。
実際の建築費ではなく、標準的な建築費なんですね。
建築費はその時その時で変わりますし、発注者と請負者の力関係でも上下します。
したがって、価格時点で「標準的な建築費」で査定しましょうとの趣旨です。
「発注者が直接負担すべき通常の付帯費用」って何ですか?
かなり難解な部分ですので、こちらについては独立の講義を用意しますね。いまは諸々の諸経費と理解しておいてください。
建物の再調達原価は、標準的な建築費+諸々の諸経費ですね!
土地の再調達原価
① 土地の再調達原価は、その素材となる土地の標準的な取得原価に当該土地の標準的な造成費と発注者が直接負担すべき通常の付帯費用とを加算して求めるものとする。
スキー場で例えると、素材となる土地は山林ですね?
造成費は、木を切り倒して、宅地にするための費用。
発注者が直接負担すべき通常の付帯費用は、諸々の諸経費って感じですかね。
そんなイメージです。ここでも造成費については、「標準的な造成費」となっていますが、これも建物の再調達原価と同様の理由です。
ただ、ここでいう土地の再調達原価とは、更地の再調達原価を指しており、建物及びその敷地で述べられている土地の再調達原価とは異なる概念ですので注意してください。
建物及びその敷地の再調達原価
建物及びその敷地の再調達原価は、まず、土地の再調達原価(再調達原価が把握できない既成市街地における土地にあっては取引事例比較法及び収益還元法によって求めた更地の価格に発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を加算した額)又は借地権の価格に発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を加算した額を求め、この価格に建物の再調達原価を加算して求めるものとする。
ここでも土地の再調達原価がでてきますが、こちらの土地の再調達原価は、さきほどの更地の再調達原価とは異なる概念です。
土地の再調達原価(再調達原価が把握できない既成市街地における土地にあっては取引事例比較法及び収益還元法によって求めた更地の価格に発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を加算した額)
ここの土地の再調達原価は、更地価格に諸経費を加算したものになってますね。
山林から、この土地の再調達原価を求めるためには、以下のような手順になります。
山林の価格+標準的な造成費+造成に係る諸経費で更地の価格が求まって、それにさらに諸経費を加算するんですね!
同じ用語を使いまわしているので、勘違いし易い箇所ですね。
基準でも述べているように、基本的に土地の再調達原価は更地価格+諸経費で求まります。
あとは簡単です。土地の再調達原価に建物の再調達原価を加算すれば良いだけですから。
借地権の場合は?
更地の価格の代わりに借地権の価格を使えばいいのです。
直接法と間接法
③ 再調達原価を求める方法には、直接法及び間接法があるが、収集した建設事例等の資料としての信頼度に応じていずれかを適用するものとし、また、必要に応じて併用するものとする。
「標準的な造成費」や「標準的な建築費」の求め方については、直接法と間接法があります。
直接法は、実際の造成費や建築費を積み上げて、直接的に求める方法です。
間接法は、実際の造成費や建築費を使わない方法・・・他の建設事例や造成事例を使うんですか?
そうですね。間接法は似たような建設事例や造成事例を集めて、補正して、間接的に求める方法です。
直接法
ア 直接法は、対象不動産について直接的に再調達原価を求める方法である。
直接法は、対象不動産について、使用資材の種別、品等及び数量並びに所要労働の種別、時間等を調査し、対象不動産の存する地域の価格時点における単価を基礎とした直接工事費を積算し、これに間接工事費及び請負者の適正な利益を含む一般管理費等を加えて標準的な建設費を求め、さらに発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を加算して再調達原価を求めるものとする。
柱一本まで積み上げて、建築費を求めて、諸経費を加算して求める方法です。
かなり大変ですね。
建設会社に見積もりを発注しなければならないため、あまり現実的ではないです。
また、対象不動産の素材となった土地(素地)の価格並びに実際の造成又は建設に要する直接工事費、間接工事費、請負者の適正な利益を含む一般管理費等及び発注者が直接負担した付帯費用の額並びにこれらの明細(種別、品等、数量、時間、単価等)が判明している場合には、これらの明細を分析して適切に補正し、かつ、必要に応じて時点修正を行って再調達原価を求めることができる。
実際の建築費を補正する方法も直接法のひとつです。
実際の建築費を直接は使わず、補修正して使うんですね!これならできそうです。
ただ、建築工法が変わってしまって、この工事の方法でいまは建物を建てていない場合や、建築後相当の期間が経過してしまっていると時点修正もあまり意味をなさない場合には、いい方法とは言えません。
間接法
イ 間接法は、近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等に存する対象不動産と類似の不動産又は同一需給圏内の代替競争不動産から間接的に対象不動産の再調達原価を求める方法である。
間接法は、当該類似の不動産等について、素地の価格やその実際の造成又は建設に要した直接工事費、間接工事費、請負者の適正な利益を含む一般管理費等及び発注者が直接負担した付帯費用の額並びにこれらの明細(種別、品等、数量、時間、単価等)を明確に把握できる場合に、これらの明細を分析して適切に補正し、必要に応じて時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って、対象不動産の再調達原価を求めるものとする。
建設事例に基づいて補正して求めるのが間接法です。
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